野球選手でピッチャーの投げ方には数種類のスタイルがあります。
- 腕を真上から力強く振り下ろすオーバースロー
- やや斜め方向からしならせた腕が出てくるスリークォーター
- 真横から投げるサイドスロー
- 下から投げるアンダースロー
といったものです。
中でも特徴的なものは、やはりアンダースローと呼ばれる投げ方ではないでしょうか。
姿勢をできるだけ低くし、腕が身体よりも下の位置、ほとんど地面スレスレから出てくるその投げ方は、「サブマリン(潜水艦)とも呼ばれています。
低い位置から浮き上がるような軌道が武器である一方で、スピードはなかなかだしづらいんですよね。
そんな球速がデメリットのアンダースロー最速を誇るピッチャーと、現役の投手の特徴について探ってみたいと思います。
アンダースローの最速ピッチャーは誰?
日本のプロ野球でのアンダースローの最速は146キロとなっています。
投げたピッチャーは福岡ソフトバンクホークスに所属している現役のアンダースロー投手・高橋礼選手によるもので、2018年の日本シリーズでの広島東洋カープとの試合で記録したものです。
アンダースローでのストレートの球速はせいぜい130キロ程度であることが多いので、140キロ以上のストレートを投げ込む高橋選手がいかに剛腕であるのかが分かるかと思います。
高橋選手については、また詳しく解説します。
アメリカのメジャーリーグでは、ブラッド・ジーグラーという選手が高橋投手を上回る最速150キロを記録しています。
日本プロ野球では一番球速が出やすいオーバースローでも150キロを出せない投手が多くいます。
そんな中、アンダースローで最速150キロってもはや異次元の投手。
ただし、ジーグラー選手はサイドスローに近いアンダースローの投げ方をしていますので、沈み込んで投げるよりもストレートの最速は出しやすいのでしょう。
とはいえ、一般的にアンダースローでは球速が出づらいと言われていますから、140キロ以上のスピードボールを投げることのできるアンダースローの投手はかなり貴重な存在です。
現役アンダースロー投手と特徴
現役ではなく過去にさかのぼるとアンダースローの最高投手と言えば阪急ブレーブス(現オリックスバファローズ)の山田久志投手でしょうね。
全盛期はスピードガンがなかったため、最速がどれくらいなのか正確には分かりませんが推測では150キロを投げていたという話もあります。
山田久志投手は最優秀防御率2回のタイトルに3年連続MVP、最多勝3回、アンダースロー初の200勝投手で名球会入り、さらに2006年には野球殿堂入りを果たしています。
まあ、これだけ凄い成績を残した投手なので現役のアンダースローピッチャーからすると目標になる投手ということになるでしょうね。
それではここからは現役のアンダースローピッチャを紹介します。
高橋礼投手(福岡ソフトバンクホークス)
すでに紹介したように、アンダースローでの日本の最速記録を持つのが高橋選手です。
高橋選手は2017年にドラフト2位でソフトバンクに入団しました。
1年目から一軍での試合出場を果たし、2年目には12勝6敗をマークして、新人王に輝きました。
先発と中継ぎのどちらもこなすことができる器用さもあります。
高橋選手の最大の特徴は身長188センチという長身を活かした、思い切りのいい腕の振り。
アンダースローとしては最速の146キロを誇り、変化球としてスライダー、カーブ、シンカーを操ります。
一般にアンダースロー投手の球速は遅いとされていますが、高橋選手は140キロを超えるストレートで打者の厳しいインコースに投げることができ、三振を奪えるところも魅力です。
2020年には中継ぎとして52試合に登板し、防御率2.65をマーク、しかし、それ以降はやや結果を残せていない印象です。
高橋礼投手のこれからの盛り返しに期待がかかります。
與座海人投手(埼玉西武ライオンズ)
沖縄県出身の與座海人投手は2017年のドラフト会議で西武ライオンズから5位指名を受けて岐阜経済大学から初めてとなるプロ入りを果たしました。
沖縄尚学高校の時は投手陣の先発3番手以下という扱いだった為、比嘉監督の進めでオーバースローから最初はサイドスローに転向。
高校時代は卒業までサイドスローだったが、さらに大学生になってからアンダースローへと投げ方を変化させました。
なかなか中学、高校、大学と投げ方を全く別のスタイルに変えながらプロ野球選手になれた例って貴重でしょうね。
與座海人投手は球速はそれほど速くありません。
120キロから130キロのストレート、スライダー、シンカー、スローカーブが持ち球です。
與座選手は1年目にトミージョン手術を受けて育成落ちを経験するなど、苦労人でもあります。
緩急を利用した丁寧な投球が與座選手の武器。
タイミングを上手くずらして、ゴロやフライにしてバッターを打ち取っていきます。
一軍デビューは2020年、それから先発と中継ぎの両方の経験を積んでいきました。
今年(2022年)は2年ぶりに開幕ローテーション入りし、前半戦を終えた時点でチームトップの7勝を記録するなど、エース級の活躍となっています。
後半戦になってもアンダースローでありながら最多勝も狙える位置にいるので今年は狙って欲しいですね。
青柳晃洋投手(阪神タイガース)
青柳晃洋投手の独特なピッチングフォームは
サイドスローとアンダースローのどちらに分類するのか難しい投げ方
判断が難しいですが、ここではセ・リーグの代表として紹介することとします。
まさにサイドスローともアンダースローとも言えない投げ方が青柳選手の特徴で、本人は「下手気味のサイドスロー」というふうに評しています。
青柳晃洋投手の持ち球はストレート、ツーシーム、スライダー、チェンジアップなどです。
ストレートの最速は148キロです。
ただし、青柳選手は完全なアンダースローではないため、アンダースローの最速記録からは外しています。
横手投げからあれだけ威力のある速球を投げられるピッチャーは珍しいです。
さらに、投球内容にも特徴があります。
それは、ストレートよりもツーシームの方が投球の割合が高いこと。
ストレートに近い球速で鋭く曲がるツーシームは、左バッターからすれば外に逃げ、右バッターからすれば打ちにいくと芯を外されるという、厄介な球となっています。
このツーシームこそが青柳選手を青柳選手たらしめる存在なのかもしれません。
まとめ
今回の記事はアンダースロー最速のピッチャーと現役のアンダースローピッチャーの3人を紹介しました。
アンダースローの投手の割合は全投手の中で1%以下だと言われています。
それくらい貴重な存在で絶滅危惧種なんて呼ばれ方をする場合もありますよね。
それゆえに、独特な軌道に対策を取りづらいというメリットがあります。
バッターからすれば普段アンダースローの投手と対戦することはなかなか無いのでかなり打ちづらいでしょう。
そういった意味では、投手として成績を残せない選手はアンダースロー変更も一つの方法なのかもしれません。
ただプロ入り後にオーバースローからサイドスローへ変更はちょくちょくありますがオーバースローからアンダースローに変更はちょっと聞いたことがないですね。
実際は私が知らないだけであるかも知れません。
アンダースローは貴重な投手であることは間違いないのでこれからも注目したいですね。
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